『芒種』(ぼうしゅ) 初候、蟷螂生(かまきりしょうず)

『芒種』(ぼうしゅ) 初候、蟷螂生(かまきりしょうず)

今日から、二十四節気は、『芒種(ぼうしゅ)』に変わります。

天明七年(1787)に出版された暦の解説書『暦便覧』には、「芒(のぎ)ある穀類、稼種する時なり」と記されています。

芒(のぎ)というのは、稲や麦などのイネ科植物が実った時に、先にできる針のような突起のことです。

「稼種」の「稼」の意味には、植える、うえつけ、耕作などの意味があります。

合わせて、「芒(のぎ)ある穀類、稼種する時なり」とは、芒(のぎ)を持った植物の種をまく時期ということになります。

芒種 田んぼ

 

『芒種』の初候は、蟷螂生(かまきりしょうず)です。

秋に産み付けられた蟷螂の卵から孵化した赤ちゃんカマキリが主役です。

畑仕事の目安になる七十二候にカマキリが登場するのはなぜでしょう。                        

農作物を食べる害虫を捕食するカマキリは、昔から「益虫(人間の生活に直接有益を与える生物)」として、大変頼りにされてきました。  

稲や野菜には手をつけず、害虫を捕まえてくれる、ありがたい生き物の生態系です。

日本三大祭りの一つ、京都、祇園祭では、カマキリがカマを振りあげて動く、唯一からくり仕掛けを乗せた「蟷螂山(とうろうやま)」、別名「カマキリ山」という山車があります。
祇園祭では、カマキリは神の能力をもち、神の使者として崇められています。

祇園祭 蟷螂山(とうろうやま)カマキリ山

祇園祭・蟷螂山(とうろうやま)

そして、ちょうどこの節気の時期は「稽古はじめの日」という、昔から芸事も世界では、稽古はじめを六歳の六月六日にすると上手になる謂れがあります。

六を指で数えるとき、「6」はちょうど小指が立つので、「子が立つ」のは、縁起がよいから、ということもあるそうです。

 

同様に、こんな室町時代からの言い伝えもあります。

世阿弥が記した能の指南書「風姿花伝」には、「この芸において大方七歳をもて初とす」とあり、数えの七歳(満六歳)の六月六日に稽古をはじめるべしという一節がありました。

「能楽の稽古は、だいたい七歳くらいで始めるのが良い。子どもが自然にやりだす仕種のなかに、きっと得意なものがある。心のままにさせておくのが良い。あまりこまかく教えたり、細かく注意したりしてると、子どもはやる気をなくしてしまって、「能」は止まってしまう。この段階では大人の真似はさせず、能に基本的なこと以外はやらせてはならない。」ということでございます。

「子どもに無理をさせず、子どもが自分からやりだしたことを、自由に、のびのびとやらせよう」
という主旨は、現代にも十分繋がる考え方ですね。

そのような経緯から、「おけいこの日」「楽器の日」「いけばなの日」でもあり、いずれも稽古をはじめるのによい日です。                               

子どもの世界を広げるきっかけとして、いろいろな経験をさせてみるいい時期なのかもしれません。

稲や麦を種をまく時期と、おけいこを始める時期、「さぁ、今から始めよう! 」と気合に満ち溢れる季節です。

みなさまも、なにか始めてみられてはいかがでしょうか。

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