前回に引き続き のレン の情景手ぬぐいを染めてくださっている京都の染色工場から。
前回も触れましたが、のレンの手ぬぐいは「浸透染め」という捺染の中でも特殊な技法で染めていただいています。
捺染の特徴である細かく繊細な柄表現、注染の特徴である裏まで浸透した深みのある味わいを両立させている染めと云えます。
今回はその浸透染めの工程をご紹介したいと思います。
板場にてぬぐいを貼りつける
まずは板場という長い一枚板の上にてぬぐいの生地を貼っていきます。
板場の奥行は約24m。
こちらの工場では、もともと風呂敷の染めのための板場だったため、手ぬぐいに対して幅は大きめ。
そのため板場にてぬぐい二段分を貼り付けて同時に染色していきます。
型とのずれが出ないよう、上下に歪みがないよう貼り付けていきます。
適度なテンションで貼り付けなければならないため、重要な工程となります。
調合した染料を受け皿にためる
事前に調合した染料を型の受け皿にためていきます。
一色目の染め
一色目は濃いオレンジの地色。
丁寧かつ一定のリズムで型枠の上から染めていきます。
二色目の染め
一色目が乾くと二色目を染めていきます。
二色目は薄いオレンジの地色。
絵柄がずれないよう慎重に進められていました。
地色の浸透
二色目を染めた後は地色が浸透させるための時間が必要となります。
通常の捺染の場合は板場の温度は45度前後に設定し乾燥させるそうですが、浸透染めの場合は30度程度に落としてゆっくり浸透させていきます。
ここが通常の捺染と比べて浸透染めが手間のかかるところです。
しかしこのひと手間が奥行きのある染め上がりにするための勘所となります。
三色目の染め
三色目は一色目よりも濃いオレンジ。
二色目までは紅葉型を抜いて染めていましたが、今回は紅葉型で染めています。
色が重なることで、徐々に奥行、深みが出ていることがわかると思います。
四色目の染め
最後の染めとなる四色目は臙脂色(えんじいろ)。
さきほどまでのオレンジよりも黒く艶やかな色が加わることでグッと引き締まります。
浸透・乾燥のための吊るし
浸透を促進させるため、染め終わるとすぐに板場の天井に吊るします。
浸透・乾燥させると染めの工程は完了です。
次の工場で洗い・乾燥の工程に入って完成となります。
浸透染めの現場を拝見して「手間」という価値について改めて感じるところがありました。大量生産・効率化のためにスピードアップすることが正義とされていますが、浸透するための手間・時間をかけることで生まれる価値は大切にしていきたいと思うところです。
京都の職人による浸透染めの手ぬぐい、是非一枚使ってみてください。